『<タイプ別・段階別>続 上手な登校刺激の与え方』(小澤美代子/編著 ほんの森出版)


おわりに

 不登校の子どもたちを援助するために、『上手な登校刺激の与え方』を出版して3年がたちました。ありがたいことに、多くの方々に読んでいただき、版を重ねて4刷となりました。不登校に対して、何もせずに見守るのではなく、適切なかかわりをすべきだという考えが少しでも理解されていけば、救われる子どもたちも多くなると思います。
 前著の考えに立ち、一昨年、『月刊学校教育相談』(ほんの森出版)に「<タイプ別・段階別>登校刺激の与え方」を1年間(2004年4月号〜2005年3月号)連載させていただきました。それが本書の「第1部 不登校理解の基礎知識」編と、「第2部 タイプ別の対応の事例」編となっています。事例編は、同じ相談機関で共に仕事をした方々に執筆してもらいました。
 今回、この連載をもとにして本にしましょうという話をいただいたとき、連載の執筆者で本をつくりたいと思いました。幸い、全員がこころよく賛成してくれて、本つくりがスタートしました。
 連載の準備をしたときから、この本ができ上がるまでに、転出する人があり、転入する人があり、現在の職場はさまざまになっています。私自身も、定年退職でその職場を離れました。しかし、子どもたちの力になりたい、お母さん方の支えになりたいという思いをひとつにして、原稿を書き進めました。その結果、本書は子どもたちへのたくさんの愛情と、先生方へのたくさんの応援のエネルギーの詰まったものになりました。
 共通のコンセプトは、「見立て」です。ひとつの状況から、たくさんの情報を取り出し、たくさんの状況を推測し、たくさんの意味を読み取り、たくさんのかかわりをつくり出す。そのプロセスを、読む方と一緒にたどりたいと思いました。一つひとつの事例を読み進みながら、おのずと「見立て」が進んでいくものであってほしいと思いました。
 その「見立て」のみちすじを助けるために、いくつかのチェックリストをつくりました。チェックリストというと、機械的な感じをもたれるかもしれませんが、見方をしばるものではなく、方向をさぐることを助けるものとしてつくりました。どう考えたらよいか分からないとき、どうかかわったらよいか迷うときに、開いて活用してほしいと思います。
 でき上がった原稿を読んでみて、見立てのプロセスは、カウンセリングのプロセスと同じだなと感じました。できごとを尋ねる、確かめる、振り返る、その流れの中で、事実が見えてきて、解決の糸口がつかめます。行き詰ったとき、不安なときには、援助者自身が問われます。自分の理解の仕方を、かかわり方を、あり方そのものを問われます。カウンセリングを学ぶことがこのように生かされていると感じました。
 それにしても、常識では考えられないほど短期間での本つくりに、ほんの森出版の佐藤さんには無理を重ねていただきました。時間の余裕がないために、メーリングリストを駆使して情報交換をしながら、編集長の佐藤さんまで巻き込んで、嵐のような本つくりでした。原稿とプライベートな情報を織り交ぜたメールを交換しながら、離れ離れになった仕事仲間が、楽しい期間を共有することができました。こうして出来上がったこの本は、定年退職した私にとって、この上ない贈り物をいただいた気持ちです。
 執筆者の皆さま、また、急遽、学校の事例を書いてくださった先生方、そして、これまでにお会いした多くの来談者の方々のお陰で、この本は出来上がりました。感謝いたします。
 最後になりましたが、ほんの森出版の佐藤さんには、このような充実した(or苦しくも楽しい)本つくりの機会を与えていただき、ありがとうございました。執筆者全員の気持ちをこめて、心から感謝いたします。

 
平成18年1月10日  初雪の日に
                                小澤美代子


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